2025/12/14

SONY TC-100F (DCモーター交換とPWM制御)

SONY TC-100Fの紹介です。1970年頃、24,800円のカセットテープレコーダーです。今回はDCモーター交換と回転数制御にPWM基板を実装してみました。

カセットのイジェクトは独特で左の青いレバーを押しながら左に引くとカバーが開く構造です。早送りと巻き戻しはレバーを押し続ける必要がありロックしない方式です。
 
これも独特の丸いメーターで録音レベルとBATTレベルの針が振れます。意外と感度は良好です。 

オーソドックスな録再ヘッドと消去ヘッドの構成です。昔からヘッド掃除にはヘッドクリーナー [AT6037]などを使います。

ヘッドクリーナー [AT6037]:Amazonヘのリンク

上の写真は昔から使っているヘッド・イレーサーTDK AH-301です。オープンリールデッキ、カセットデッキの両方のヘッドの消磁ができます。今ではヘッド・イレーサーをほとんど見ません。TDK カセットヘッド消磁器 AH-202Bぐらいでしょうか。

TDK カセットヘッド消磁器 AH-202B:Amazonへのリンク

TC-100Fの回路図は見つかりません。TC-100の回路図(電波科学 1968-1 臨時増刊 テープレコーダーのすべて)を参考にします。若干、回路は異なりますが十分使えます。

TC-100FはTC-100の改良版です。当時のSONYカセットテープレコーダー1号機のTC-100にはその後何代も受け継がれたすぐれたテープ機構を搭載しています。蓋を開けて配線を取り外してプリント基板を上に向けます。ゴムベルトが劣化して伸び切っているので交換します。コンデンサなどの劣化部品を全て交換します。

 

スライドスイッチの接触不良で音が出たり出なかったり不安定です。スライドスイッチを取り外して分解清掃します。

部品交換後にヒヤリングをします。回転ムラが激しく使い物になりません。清掃や注油では対処できそうにありません。DCモーターの交換が必要です。

現在、購入できるのはEG-530AD-6B 6V 2400rpm CCW(反時計回り)です。EG-530AD-6Bは取り付けのネジ位置や軸の太さ2mmも同じです。レコーダーにEG-530AD-6Bを実装して再生してみます。DCモーターの回転が早すぎます。DCモーターの内蔵抵抗を回しても調整できませんでした。このクラスのテープレコーダーにはサーボ回路がないので回転数を制御できません。

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DCモーターの回転数制御にPWM基板を使います。最近、PWM制御基板は安価で導入しやすです。4V〜6Vの出力調整範囲でPWM周波数20k Hz以上のPWM製品です。PWM周波数が20k Hz以上であれば可聴範囲外なので回路への混入時に雑音として聞こえません。内蔵するためできる限り小型の基板を選定します。

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電池ボックス下にPWM制御基板を実装するため基板の高さを低く加工します。ボリュームを取り外して半固定抵抗に交換、電解コンデンサーを交換して横に寝かせて取り付けます。ボリュームの取外しは慎重に作業しないとプリント配線が破損します。

電池ボックスを取り外すとPWM制御基板の半固定抵抗で回転数を調整できます。今回はAC電源の再生で調整します。カセットテープを装着して再生します。PWM基板のボリュームで回転数が調整できるようになりました。ヒヤリングしても回転数ムラもなく動作は良好です。

ここで想定外のトラブルです。再生は良好ですが、早送りと巻き戻し時にDCモーターが回転しません。早送りと巻き戻しは再生時よりDCモーターへの負荷が大きくトルクが足りません。回転数を再生に合わせて調整した関係でDCモーター電圧が下がり過ぎたのが原因です。

 

 上の図はTC-100のモーター周辺の回路図(抜粋)でTC-100Fと同じです。

対策を考えました。早送りと巻き戻し用にPWM基板を追加する案です。上の回路図のように改造します。早送りと巻き戻し操作をするとPWM基板①とPWM基板②の電源が入り並列運転になります。PWM基板②で早送りや巻き戻しできるように回転数を調整します。再生/録音の操作ではPWM基板①だけ電源がONになりPWM基板②の電源はOFFになります。PWM基板①で再生/録音の回転数を調整します。PWM基板の並列運転ではDCモーターへの出力にダイオードを入れてお互いの干渉を遮断する対策をします。

2つ目のPWM基板②はDCモーターの真下に設置します。PWM基板は改造せずにそのまま実装できます。基板は熱収縮チューブで絶縁してスポンジで抑えて固定します。動作を確認しますが早送りと巻き戻しの回転が弱く最後までテープを巻くことができません。PWM基板②の出力電圧がまだ不足しています。

その他の機能制限として再生時の回転数は電池またはAC電源のどちらかに合わせる必要があります。電池とAC電源では再生/録音の回転数に差(供給電圧の差)が出るからです。そのためTC-100Fを2電源対応(それぞれの電源で再生/録音の回転数を同じにする)にはできませんでした。

今回の教訓はDCモーターの選定とその制御です。EG-530AD-6Bより再生時の電圧が高い製品が必要でした。そうすればPWM基板は1つで対応できたはずです。TC-100Fの内部スイッチの配線変更で2つのPWM基板の切替ができましたが偶然以外の何者でもありません。TC-100FのDCモーター交換の事例は既存流用以外は見つからないはずです。入手出来るEG-530AD-6Bでは規格が合わずDCモーター制御が必要で難易度が高いからです。今日の修理作業はここまでです。

後日、昇圧コンバータ基板を使い早送りと巻き戻しのトルク不足を改善してみます。

2025.12.16 昇圧コンバータ基板の追加(早送りと巻き戻しが回転しないことへの対策)

 
が届いたので早速実装します。昇圧コンバータ基板のジャンパーは12V設定にします。1cm×2cmの小さな基板なので隙間に実装できると思います。
上の回路図のようにPWM②に昇圧コンバータ回路を接続する構成に変更します。十分で程度で作業は終了です。早速、早送りと巻き戻しの試験をします。巻き戻しはOK、早送りが一番トルクがかかり回転が遅いですがとりあえず成功です。時間がかかりましたがSONY TC-100Fの修理は完了です。これまでの修理作業を見ていただければおわかりになる様にTC-100FのDCモーター交換はお勧めできません。この時代のテープレコーダーの修理はむずかしいです。オリジナルを損なわないためにDCモーターを修理する気持ちも良くわかります。しかし、少しの音揺れを妥協するとレトロで懐かしい気分も消えてしまします。しかっりした音が出てこそテープレコーダーです。オリジナル重視か音重視かの2択に心が揺れます。今回の修理は音重視です。古くても音揺れもなく安心して音楽を楽しむことができます。音揺れを気にせずに昔を鮮明に思い出します。
 
部品の入手先