1.概要
| 電子ブロックRS-3A(100回路) |
電子ブロックRS-3A(100回路)は、電子ブロック機器製造株式会社製で1969年、5,700円で販売されたものです。
2.レコードプレーヤーアンプ
(1)違和感
昔、SR‑3Aで遊んでいた小学生の私が、唯一実験できなかった回路があります。 「3石レコードプレーヤーアンプ」です。当時の家庭にはレコードプレーヤーがない家も多く、私の家も例外ではありません。だからこそ、この回路だけは“触れられない未来”の象徴のように見えていました。そして「ラジオやテープレコーダーを接続するアンプでもいいのに何でわざわざレコードプレーヤーなんだろう」と疑問に思っていました。
そんな昔の疑問は時代と共にすっかり忘れて、SR-100回路集を見ていると「3石レコードプレーヤーアンプ」が目に止まりました。クリスタルピックアップのレコードブレーヤーのアンプです。
| 3石レコードプレーヤーアンプの実体図 |
レコードのRIAA補正の簡易版として、入力がハインピーダンスのアンプ回路だと思っていました。 しかし実体図を見ると入力インピーダンスは16.8kΩでそんなに高くありません。ハイインピーダンスで高域を落としてレコードを補正する単純な仕組みではないようです。何かおかしいです。
(2)RIAA特性
レコードのもつRIAA特性はイコラーザで補正しますが、以下の主な3つで定義されています。
・低域(50Hz以下):ブースト(+6dB/oct)
・中域(500Hz~2kHz):ほぼ平坦
・高域(2kHz以上):減衰(-6dB/oct)
この特性を前提にすると、電子ブロックの回路がどこまでレコード再生を意識していたのかが見えてきます。
(3)電子ブロックの簡易イコライザー
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| 3石レコードプレーヤーアンプ回路図 |
ベースとコレクタ間をよくみると、直接250kΩ、0.005μF+47kΩ+250kΩ、0.005μF+0.01μFの3種類の帰還になっていることがわかります。
電子ブロックの簡易イコライザー回路は、ベースとコレクタ間の帰還(NFB)経路が周波数によって以下のように読み替えることができます。
・低域(50Hz以下):0.005μF+47kΩ+250kΩ
・中域(500Hz~2kHz):直接250kΩ
・高域(2kHz以上):0.005μF+0.01μF
子供向け電子玩具に抵抗1本で済むハイインピーダンス回路で胡麻化さずに簡易イコライザーを搭載しています。子共には判らない内容なのに敢えて本格的な回路構成です。どれだけ真剣に電子ブロックを開発したのか、今になってわかりました。
後のST-100では「レコードプレーヤーアンプ」は姿を消しています。メーカー側も子供の実験教材として無理があると判断したものと思います。また、SR-3Aは用途別のアンプですがST-100からは方式別のアンプとなり、電子玩具から電子教材へと変遷しています。
3.フラットな特性のアンプ
折角なのでチューナーやDACを接続して電子ブロックの素の音質を確認してみます。簡易イコライザーを外してフラットな周波数特性のアンプに組みなおします。
(1)RIAA補正(イコライザーあり)
| RIAA補正(イコライザーあり)の基板 |
比較参考するためRIAA補正のあるレコードプレーヤーアンプを電子ブロックで組んだ基板の様子です。 SR-3Aにはピンジャックの部品もないため自作しました。
(2)フラットな特性(イコライザーなし)
| フラットな特性(イコライザーなし) の基板 |
DACやチューナーを接続するために、RIAA補正回路を外してフラットな特性のアンプに組みなおした様子です。
(3)ヒアリング
| ヒアリング風景 |
・RIAA補正(イコライザーあり)
中低音がまったく出ない、ハイ上がりの音です。高音が耳について聞きづらい音です。当然ですが。
・フラットな特性(イコライザーなし)
初段のトランジスタまわりの抵抗を変えて一番歪の少ない回路にしてみました。
(条件)
DAC(Topping DX3pro)から電子ブロックへの出力は-28dB
初段の帰還抵抗は6.8kΩ
ベースとアース間は16.8kΩから47kΩへ変更
エミッタとアース間は10Ωから330Ωへ変更
中間トランスは反転させて出力段の利得を下げています
2Wayスピーカーは8cmウーファー、2cmソフトドームツィーターでバスレフ構造
この条件で基板×2セットによるステレオでのヒアリングとします。
低音が全くでないハイ上がりの音がします。音がやせて聞こえ、洞窟に入ったようなエコー感があります。ハイ上がりの影響なのかノイズ感があります。
思っていたよりずっと音が悪いです。想像以上に良くないので原因がないか思案しました。
各部の定数を改めて見直してみます。初段トランジスタの出力側カップリングコンデンサは30μF、ボリュームの出力側には10μFです。しかし、ピンジャクからのカップリングコンデンサは0.05μFです。入口のカップリングコンデンサ0.05μFで低域を大幅にカットしてるのが原因です。
・カップリングコンデンサ 0.05μFから1μFへ変更
| 0.05μFを1μFに交換した様子 |
明らかに中低音が大幅に増えて音のバランスが良くなります。奥行は深く定位も良好です。ノイズ感はなく、小型スピーカーによる音楽鑑賞でも十分なパワーがあります。気持ちよく音楽を聴くことが出来る音です。DACとの接続ですがクリアでハイスピードの音はでません。あくまで、ほどほどの帯域でバランスよく聴かせるアンプです。
不思議なのですが、このフラットアンプは昔のラジカセの音がします。何故かなつかしく、ほっとする音がします。
・参考:回路定数変更一覧表
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| 回路定数変更一覧表 |
SR‑3Aが発売された当時、電子技術は明るい未来を切り開く力を持つと誰もが信じていました。
テレビをつければ、漫画は鉄腕アトム、エイトマン、スーパージェッター、宇宙少年ソラン、海外ドラマは宇宙大作戦(スタートレック)、宇宙家族ロビンソン、サンダーバード、原子力潜水艦シービュー号、世相的には大阪万博、アポロ11号など未来科学や夢満載の環境でした。子供の私には、その未来の技術と夢の一部を電子ブロックに見たのかもしれません。自分が手にすることができる未来の技術と夢です。
オーディオ文化が成熟期を迎えた時代でもあり、電子ブロックに「3石レコードプレーヤーアンプ」が組み込まれたのは、技術者自身の情熱と時代の希望が重なった結果だったのでしょう。子供向け教材でありながら、本物の回路をそのまま縮小して渡そうとした――そんな自由と夢が許された時代でした。
電子ブロックは、未来を信じていた時代の空気そのものです。50年越しに理解できたのは、回路の仕組みではなく、 あの頃の日本が抱いていた“技術への憧れ”だったのかもしれません。
5.電解コンデンサ・ブロックの作成 2026.7.13
カップリングコンデンサ1μFは電解コンデンサの足を基板に直接刺しています。見栄えが悪いので、ジャンクの余剰ブロックを使い作成してみました。
| 作成した1μF電解コンデンサ・ブロック |
| 作成した1μFを基板に実装した様子 |

