DIATONE DS-25B 空気感を持つスピーカーとCCLD
1.概要
・経緯
私が理想とするスピーカーには、微細信号を伴う空気感が必要条件です。そして、その空気感を再生できるスピーカーを探した結果、DIATONE DS-25Bにたどり着きました。
・ONKYO D-202A
以前、ONKYO D-202AにテクニクスEAS-8HH17G+CCLDを組み合わせた外付けツィーターを製作しました。高域の微細信号や空気感の獲得において、これはある程度の成功を収めています。
| D-202AとEAS-8HH17G+CCLD |
さらに改善しようと、D-202Aのソフトドームツィーターを取り外し、ウーファーとEAS-8HH17G+CCLDを直結してヒアリングしてみました。 当然ながら、既存のネットワーク回路ではクロスが高すぎて中域が中抜けになり、予想通りの結果です。。それ以上に問題だったのは、ウーファーとEAS-8HH17Gの「スピード感の不一致」でした。
異質な音の組み合わせであり、統一感はまったくありません。ウーファーの重たい立ち上がりと不均衡な鳴り方が、クリアでスピード感のあるホーンツィーターとかみ合いません。この組み合わせは基本的に間違いでした。 振り返れば、ドームツィーターにより中域の中抜けが埋まり、ウーファーとツィーターの音質の違和感をうまいことごまかして聴かせていたのだと思います。それはまるで、薄曇りの空に時折青空を覗かせるような音質です。
このD-202AとCCLDの検証でわかったことがあります。それは、「どんなスピーカーと組み合わせてもCCLDが効果を発揮するわけではない」という事実です。 空気感を持つスピーカーに、CCLDの空気感を軽くのせるアプローチこそが必要であり、そもそも空気感を持たないスピーカーではCCLDの効果は薄いということです。
・空気感を纏うスピーカーの選定
「ツィーターはテクニクスEAS-8HH17G+CCLDを使う」という前提のもと、ウーファーやエンクロージャーの条件を整理すると、以下の要件が浮かび上がります。
・ウーファーのコーンが軽く、微細信号や空気感を再生できる応答性の良さ
・微細信号をロスしないため、ネットワーク回路はできる限りシンプルな構成が良い
・共振の少ないエンクロージャーであること
が考えられます。
おのずとフルレンジスピーカーが候補として浮かびますが、現代音楽を再生するには帯域が不足しています。市販のスピーカーの中から候補を選定してみたが、驚くほど該当する機種は極わずかでした。
3Wayスピーカーは対象外とし、2Wayから探します。小型ブックシェルフの小口径ウーファーはコーンが重く、アンプで強引にドライブするタイプのため対象外。円筒ダクトのスピーカーも共振による音の濁り(歪)があり対象外です。かといって、密閉型で空気感を出すには大容量の箱が必要となり、我が家の環境では現実的ではありません。
・DS-25BまたはDS-30B
| DS-30Bカタログ |
空気感の出る2Wayスピーカーを探す中で思い出したのが、DIATONE DS-30Bです。30cm大口径ウーファー+ツィーターという構成のモデルです。 当時、「なぜ音のスピード感が出にくい大口径で2Wayを組むのだろう?」と疑問に思っていました。重たく迫力のある音を想像していて、なぜかダクトの形状も三角形かと疑問に思っていました。
しかし実際の大口径ウーファーは、硬くて軽い素材で応答も早く、広い面積のコーンで効率よく空気を押し出すことができます。つまり、空気感を出すための理想的なウーファーでした。 しかもエンクロージャーは、特定周波数の箱鳴りを抑えた分散共振構造を採用しています。 極めつけはトライアングルダクトです。円筒型ダクトと違い、三角形の構造によって特定周波数の共振を排し、不要な歪みのないクリアで自然な音を実現しています。このダクト構造なら、ウーファーの動きを適度に軽く均一化し、微細信号や空気感を豊かに再生できそうです。この手の「共振させない構造のバスレフ」を持つスピーカーは少なく、極めて貴重であるとも言えます。
| DS-25Bカタログ |
以上の理由から、DS-30B、あるいは同系統のDS-25Bを改造の対象としました。
2.製作作業
DS-30Bの方が今回の目的には最適ですが、部屋の広さの制約からDS-25Bを採用します。
| DS-25Bの角型ダクト |
また、この価格帯のスピーカーですから安価な純正ツィーターでは微細信号や空気感の再生には向いていません。そのため、微細信号と空気感をより豊かに再生するためには、ツィーターとネットワーク回路が弱点であり改善する必要があります。
(1)状態確認
箱の化粧板に傷、日焼けはありませんが、角の2箇所に凹みがあります。スピーカーネットの破れ、ほつれ、シミ、日焼けもなく状態は良好です。スピーカー端子は左右共に破損しているので交換が必要です。コーンのつぶれや傷、日焼けもなく良好です。ウーファーのエッジは適度に柔軟性が残っているのでここまま使用しても大丈夫そうです。ネットワーク回路はオリジナルのままで改造されていません。
(2)ヒアリング(オリジナル)
DS-25Bに一切の手を加えないオリジナルの状態でのヒアリングです。
音全体に透明さはなく、灰色に覆われてクリアさは感じられません。音の出方が全体的にやさしい音がするスピーカーです。高域は非常に細かく繊細だが、帯域の伸びが不足しています。低域は出ているのですが音としての強調感が一切ありません。全体におとなしく聴こえ、決して刺激的な音が一切しません。音全体に何か音の余韻がまとわりついている様な印象を受けます。
(3)ヒアリング(電解コンデンサを交換)
| 取り外したネットワーク基板 |
| 劣化部品を交換した基板 |
ネットワーク回路の劣化した電解コンデンサを交換してのヒアリングです。
全体的に音の透明感が向上してクリアになりましたが、まだ透明感が不足しているように感じます。高域は細かく繊細で上限まで伸びています。低域はオリジナルよりもほんの少し出ています。全体の音の印象は繊細でやさいい音、そして音全体に何か音の余韻がやさしくまとわりついているように聴こえます。
もっと元気な若者向けなスピーカーかと思っていましたが、非常に繊細でやさしくバランスの良い音のするスピーカーです。
(4) ヒアリング(EAS-8HH17G+電解コンデンサ交換済)
| EAS-8HH17Gにツィーター交換 |
DS-25Bのツィーターのビス穴とEAS-8HH17Gのビズ穴の寸法は同じでそのまま取り付け可能です。ただし、ツイーター形状が異なるため埋め込み形状までは合いません。電解コンデンサは交換済の状態でツィーターをEAS-8HH17Gに交換しての条件でヒアリングをします。
高域が強いのでHIGHポジションのつまみをnormalからdecreaseに切替ますが、高域はこれでもやや出過ぎの感があります。高域はシャープで少し硬く粒子が大粒で粗い印象です。音のバランスは高域よりですが、純正ツィーターよりは、解像度、クリアさ、高域の伸びなど遥かに向上しています。
ユニット間のつながりは、やや別々に鳴っているような印象を受けます。もう少し一体感がありスムーズなつながりが望ましいです。ツィーターの個性が前面で出てしまい、空気感、音の余韻、場の雰囲気などは陰に隠れてDS-25Bの良さを消しています。
(5)ヒアリング(外付けEAS-8HH17G+CCLD)
| 外付けツィーター+CCL |
過去に製作したD-202A+EAS-8HH17G+CCLDでは、D-202Aのウーファーは重くスピード感があるツィーターと噛み合いませんでした。DS-25Bのウーファーは硬く軽いためEAS-8HH17G+CCLDのスピード感と相性もよく何の違和感もありません。
ウーファーとツィーターの音質が溶け合い同じ系統であるかの様に聞こえます。中音の中抜けもなくバランスが良いです。
音全体の圧倒的な透明感とクリアさが第一印象です。音の見通しが良くなり奥行が良く分かります。音が空間に漂う雰囲気も再現できています。不思議なことに、音がシャープになった影響でこの組み合わせの方が低域が締まってよく聴こえるようになりました。音にまとわりつく音の余韻にも透明感があり自然で意識させなくなり美しいです。外付けツィーターのせいなのか音像が上下に少し伸びています。また、外付けツィーターの音量を少し下げて聞きたいです。ただし、全体的に音の密度や厚みがやや薄くかんじられます。
このヒアリングで気づいたことがあります。コンサートの生演奏では疲れませんが、今まで使ったスピーカーでは聴き疲れてしていました。現代的な解像度や情報量、帯域、歪みなどではなく、空気感や余韻のある聴き疲れしない、自然な音?が欲しかったことがわかりました。
ここで誤解していただきたくないのは、DS-25Bが生演奏(原音再生)を再現できるスピーカーであるとは言っていないことです。あくまで、私個人が聴きたい音(空気感など)を再現できるスピーカーですとの意味であることをご理解ください。
(6)製作(EAS-8HH17G+CCLDの組み込み)
DS-25Bの弱点であるツィーター交換とネットワーク回路+CCLDに変更します。
・ネットワーク回路(オリジナル)
DS-25Bのネットワーク回路図を実機から書き写しました。
![]() |
| DS-25B回路図(オリジナル) |
・ネットワーク回路(EAS-8HH17G+CCLDの組み込み)
DS-25BのツィーターをEAS-8HH17Gに交換してCCLD化します。10μF+2.2μF+0.2μFを15μ+0.2μ×2(直列)=7.5μFとして、ツィーターの中音の受け持ち範囲を引き上げます。また、ウーファーの15μFから15μF×2(並列)=30μFとして中音の上限を引き上げて、DS-25Bの音の厚みが少ないことを補います。さらにスピーカー端子プラスに0.3Ωを入れることでウーファーの音の落ち着きと1N4935による整流の安定(CCLDの安定化)を目指します。
![]() |
| DS-25B+CCLD回路図 |
改造したネットワーク回路(1/2) |
| 改造したネットワーク回路(2/2) |
出来上がったネットワーク基板は、オリジナルと比べるとかなりやりすぎ感があります。CCLDなのでどうしてもコンデンサが大容量で数量もおおくなりがちですが、これでも既存の基板を活かしてフィルムコンデンサを最低数に制限して効率よく配置しています。
・バッフルリング
DS-25Bのツィーターは外径110cmの円形です。EAS-8HH17Gの外径は曲線を描いた四角形なので形状が合わず埋め込みしての固定はできません。しかも、本体とツィーターには埋め込みの溝で隙間ができてしまいます。このままでは音漏れや共振の原因になります。対策として外径110mm、内径80mmのバッフルリングをスピーカー本体との間に挟み隙間を埋めてEAS-8HH17Gを固定します。
| バッフルリングを取り付け |
(7)ヒアリング(改善後)
| 改造されたDS-25B |
内蔵ツィーターはネットワーク改造とアッテネーター を微調整したことで、外付けツィーターにはない統一感のあるバランス良い音がします。そして、以前からCCLDを長期間にわたり聴き続けた経験から、DS-25B本来の姿が浮かび上がりました。
・高域~低域まで透明感があり非常にクリアで音が混濁しない
・中低域よりのに高音が乗っているバランスの音
・高域は非常に繊細で細かい粒子からできた綺麗な高音
・低域はしまってタイトだが量感がアップ
・ボーカルは前面で出過ぎずに適度な距離感
・全体的に音に余韻があり、音に空気が纏わりつく、無音になっても空気の気配が残る。
・低域が膨らみ楽曲により白く濁る⇒この音質には原因があり、USB DACからアンプへの出力レベルを-14dBから-24dBへレベルを下げたところ解消しました。
これらの改善効果の大半は、フィルムコンデンサへの換装、ホーンツィーターへの換装、クロスオーバーの再設計、そしてCCLDの導入によるものです。 今回のツィーター、ネットワーク回路、CCLDを除くと残ったものは、DS-25Bが本来もつ「空気と気配」です。
私はDS-25Bと向き合い、製品選定から改造に至るまでの自身の評価を根本から改めざるを得なくなりました。
当初は「大型フロア型のような自然な空気感を再生すること」が目的でした。 しかしDS-25Bが持っていたのは、自然な開放感とは異なる、「制御・調整された空気と気配」です。
※「制御・調整された空気と気配」とは、音楽が途切れた時の無音や音楽が小さく微細な表現のときの「空気の揺らぎが制御・調整されて均一である」ことを表します。
「制御された空気感」というものは、私の知らなかった世界の音です。聴き慣れない空気感には最初はわずかな違和感を覚えましたが、違う魅力があります。DS-25Bは制御・調整された空気と気配の土台を、分散共振型の箱とダクト、硬質で軽い25cmのウーファーで実現しています。
この構造で空気感を絶妙なバランスにまとめるのは、極めて繊細で難しかったはずです。現代的な高剛性キャビネットや新素材、マルチウェイのほうが、調整しやすかったはずです。これこそが、DIATONEの音づくりの一片なのかもしれません。
今回の主役は、ツィーター、ネットワーク回路、CCLDではなく、制御・調整された空気や気配を持つDS-25Bでした。
3.まとめ
今回の製作は、いかに微細信号や空気感を失わずに自然に再生するかという、私個人のオーディオ観と音楽の聴き方を投影した実験です。 しかし、予想はあっけなく裏切られます。目指した「自然な空気感」とは異なり、「制御・調整された空気と気配」を持つスピーカーの魅力を発見する実験となりました。
この制御・調整された空気や気配は、上流から下流に至るまでのシステム全体で適切なセッティングを行って初めて姿を現す極めて繊細な代物です。 DIATONEは、このブックシェルフというサイズ感の中で「自然な空気感」を再現することの限界を見据え、あえて「制御・調整された空気と気配を纏う構造」を選択したのではないか――そんな思いすら抱かせます。
当初の目的とは異なり、「DS-25Bとは何者なのか」を探るブログとなりました。
ダクト調整:2026.10.29
現在の音には違和感が残っています。この違和感への対応としてダクトの開口部を調整してみました。
・ダクトを100%開口: やや低音が少し膨らんでおり、低域が少し不明瞭で音が纏わりつく。音全体に極薄い灰色の膜の様なものがかかっているような質感。
・ ダクトを1/2閉塞:低音の量感は低下して少しすっきりした音に変化。全体にかかっている灰色の薄い膜は極わずか残っている。
・ダクトを2/3閉塞:低音の量感は過不足ない。極わずかに残った灰色の薄い膜は透明になる。全帯域の音はあたたかくウェットで絹の様な繊細な質感。この状態がベストの音質と感じます。
・ダクトを100%閉塞:音全体がタイトでクリアでシャープな音質に変化。密閉構造だが空気感を極わずかだが感じさせる。全帯域の音はやや硬くやや冷たい質感。
このダクトの調整により、2/3閉塞により低音と灰色の薄い膜が消えたときに、残った何者かが「制御・調整された空気や気配」なのでしょうか。現時点で言えることは「音が生きる何者か」であることは確かです。
音質:2026.10.31
ブログを読んだ人は、豊かな低音をイメージするでしょうが誤解です。改造したDS-25Bはワイドレンジの鮮やかな音です。
関連ブログ
以下に関連するブログをご紹介しますので参考にしてください。
・Topping DX3proのTCXO化(ジッタ低減による音質向上)
・テクニクス EAS-8HH17Gとチャージカップルド・リニア・ディフィニション
・Topping DX3Pro(推奨値とは異なる実装の改善)
・ヘッドホン・ジャック専用パッシブ・スピーカーの製作(JBL CCLDの世界)
.jpg)
